
H17.10.2 仙台市建設局主催「広瀬川フェスタシンポジウム」発表資料より

名取ハマボウフウの会の活動を発表致します。
設立日は平成13年8月15日、現在の会員数は105名(H19.3月現在)です。
会の目的は、“ハマボウフウの保護育成を通じて、より良い地域づくりに貢献する”ことを掲げ、活動をしております。

活動の拠点は、名取市閖上海岸です。
具体的な活動としては、
1、絶滅の危機に瀕しているハマボウフウの保護育成を行い、海浜植物が咲き乱れる健康で美しい「ふるさとの海岸・閖上」を呼び戻す。
2、ハマボウフウを地域の特産物に育てる。ということを目標に活動を行っております。

〈ハマボウフウとは〉
学名を《Glehnia Littoralis:グレーニア リットラリス》と云い全国各地の海岸の砂地に生育する海浜植物の一種で、セリ科の多年草植物です。
濃い緑の葉と、夏には白い小さな花をいっぱい咲かせるのが特徴で、私達が子どもの頃は、よくハマボウフウのひんやりした葉で足のうらを冷やしながら熱い砂の上を波打ち際まで駆けていったものでした。

高い抗菌性(ポリフェノール)と抗酸化性(ファルカリンデオール)を有すと共に、ビタミンA,C、植物繊維が豊富な植物で、季節の食材として刺身のツマ、おひたし、酢の物、天婦羅などにして食べることが出来ます。
特に根は、発汗、解熱作用の効用を持つ薬用にもなります。
いつの頃からか、とても良い風邪薬になることが知られ、皆が根こそぎ採り漁りました。

一方では、護岸工事や漁港整備に伴う重車両、バイク、四駆車の乗り入れが、ハマボウフウの小さな芽も踏み潰してゆきました。
現在、絶滅が危惧される希少な海浜植物として、宮城県レッドデータブック第2類に記載されています。
平成12年5月半ば、もう姿を消していたと思われていたこの幻の植物が偶然にも3株発見されました。

私達は、わずかに生き残っていたこのハマボウフウの株を、地域内の宮城農業高校に運び増殖に努めてもらうことにしました。
まもなくハマボウフウは校内の一角に根付き、その根を大きく伸ばしていくようになったのです。

平成13年8月15日、「名取ハマボウフウの会」を誕生させました。当初会員は、24名でした。

これは、その時載った新聞の切り抜き記事です。

私達は〈ハマボウフウ保護区〉を設けて看板を立て、防護柵の設置や月一回の海岸清掃など周辺一体の環境整備に乗り出しました。現在の保護区の面積は1.6ヘクタールあります。

具体的な定例活動としては、ひとつには、
毎月第一日曜日の午前中に、海岸清掃と保護区の維持管理をしながら、ハマボウフウの保護育成を行っております。

ふたつめとして、
名取市北釜地区に300坪、臨空公園傍に300坪、広浦地区に70坪、計670坪の土地を借受け、協働栽培者<NPOフルタイム枡江>分300坪と併せて1070坪のハマボウフウ栽培畑を運営しています。
その目的は、海岸移植用若苗づくりと、ハマボウフウの地域特産化づくりです。

そして、私達の活動で最も力を入れている活動が、毎年6月と11月に実施している<ハマボウフウ移植会>です。
これは、里親になってハマボウフウを育ててくれる日和山町内会、宮城農業高校、その他有志の皆さんのもとで育った若苗と、栽培畑で育てた若苗を海岸の保護区に戻す、云わば<ハマボウフウの里帰り>の行事です。

この絵は平成14年5月頃のハマボウフウ保護区周辺の風景です。
(ちなみに、当会のアドバイザーでもあり、現在仙台市野草園の名誉館長でもある菅野邦夫先生が閖上海岸に生育する海浜植物の一種「コウボウムギ」の根で描いたものです。)

そして、これが私達が目指すハマボウフウ保護区の第1次完成予想図です。
仙台空港が近くにありますので、着陸する飛行機は文字通り目の前から降りてきます。第2次計画では、南北に更に拡大し飛行機の窓から見た来仙のお客様も感動するような海浜植物が咲き誇る<海岸のお花畑>をつくるのが夢です。

第2の目標として、ハマボウフウの地域特産化を目指しています。
海岸のお花畑復活用に別途栽培畑で育ててきたハマボウフウの苗を、栽培畑の拡大を図りながら、名取特産の食材<名取ハマボウフウ>として出荷、地域に新しい働く場と収入の途を開こうというものです。
平成17年10月から試行に入り、従来の栽培プロジェクト部門を発展させた新組織<名取ハマボウフウ研究所>設立の方向で実現化を目指しています。

これが、<ハマボウフウによる健康で美しい閖上海岸再生の実践チャート>です。
“終わりの無い、しかしそれは夢に溢れた閖上海岸の再生”を願って、未だ5年目に入ったばかりの100人前後の小さな団体ですが、私達は頑張っていこうと考えています。

ハマボウフウの保護育成活動を広く、より深く浸透させるため、、私達は他の地域や地元の人たちと連携する「地域間交流」や「地域内交流」も大切にしています。
これは、「ハマボウフウ交流会」と称する他地域の団体とのネットワークです。
簡単に紹介しますと・・・・。

まず、同じ県内の、地域の婦人会が母体となり企業と行政がそれを支える「七ヶ浜ハマボウフウの会」。

市民と行政が一体となり、美しい海岸を再生させている北海道石狩市の「石狩浜海浜植物保護グループ」。

酪農地帯の活性化をハマボウフウで図る北海道中標津町の「北ねむろ山菜エコランド」。

自然環境という地域の資源を観光と融合させた新潟県寺泊町の「寺泊観光協会」。

そして、湘南海岸にハマボウフウを呼び戻そうと頑張る神奈川県茅ヶ崎市の「グループ ゆい」。
いづれの団体も手法こそ違え、ハマボウフウや海浜植物の保護育成による海岸の環境保全と地域の再生につとめる“熱い想い”を持った人たしの集まりです。

地元を中心とした地域内連携活動としては、先ほど申し上げました、年2回の「ハマボウフウ移植会」実施の際の、地域の子どもたちとPTA・町内会・名取市、仙台市の市民団体や学生、NPOの皆さんとの連携です。
この写真は、平成15年6月の「ハマボウフウ移植会」で、海岸入口から移植場所の保護区へ向かって約1キロメートルをのぼり旗を立てて元気に歩っていくスナップです。
帰りは、見栄を張る人を除いては、車に乗ってヘトヘトで帰ってきます。


保護区での移植作業のスナップです。

その他に大きなものとしては、保護区に隣接する防風林のうち、平成7年と11年の2度にわたり焼失した0.4haの海岸の松林を復元する県林業振興部主導の「環境学習林」づくりの支援です。
平成16年6月から2年間の県の予算でスタートし、平成17年12月、閖上小学校2年菅井悠二君命名による「ゆりりん」の愛称で親しまれることになりました。平成18年4月からは事業主体を「ゆりりん愛護会」に移行し活動します。

夏には、夏休みを利用してボランティア活動を体験する「高校生夏ボランティア体験」の受入れ団体として、平成16年より、関係する機関や団体の皆さんと汗を流しています。

本日のテーマである広瀬川との関わりとしては「NPO水環境ネット東北」主催の〈広瀬川1万人委員会〉に参加し、広瀬川下流名取川河口の清掃を平成16年より行っております。

次の世代を担う子どもにも、地域の自然環境を守る大切さを伝えようと、小学校の授業にも参加しています。
これは山形県の第8小学校での授業風景です。

同じく、名取市の丘陵地帯にある「ゆりが丘小学校」の“子どもエコクラブ”の皆さんの保護区へのハマボウフウ移植作業の風景です。

以上が、私たち名取ハマボウフウの会の現在までの歩みと活動の内容です。
まだまだ力も弱く小さな団体に過ぎませんが、これら多くの地域の人たちや団体と手を結び交流を深めていけば、「名取」の、そして「日本」の
“健康で美しい海岸の再生”も夢ではない、と考えています。

最後になりますが、
「終わりのない、 しかしそれは夢に溢れた美しい閖上海岸」の再生を願って、私たちは頑張っていこうと思っています。
ご清聴ありがとうございました。